自己破産の限界

企業財務,財務管理,財務分析,財務会計,財務諸表など,経営用語,会計用語として財務という言葉が広く用いられています。
そのためにまた,財務という言葉はいろいろな意味に解せられていますので,財務とはなにか,どう考えるべきかということから説明しましょう。
「資金」の組織,構造関係の支払いと行動関人間は体があって行動するもの,体は行動するものであって,体と行動は切り離して考えられません。
「企業」,「経営」というものは,人間と同じように(人間とは異なって),生産設備などのような,製造販売などという,行動の基盤(「体」,構造)があって(基盤をつくって),製造販売などという行動を行なうものです。
後に詳しく述べますが,貨幣経済といわれる経済社会では,設備代支払いなど,構造関係の支出とともに,売上収入,材料仕入代金支払い,人件費支払い,諸費用支払いという経常収支,つまり行動関係の収入支出を行ないます。
このような意味で,「企業」,「経営」は,資金(貨幣,現金,当座預金,普通預金などのような流動性預金を含む〉)の組織であって,構造関係の支払いと行動関係の収入支出を行ないます。
資本の組織,費用・収益・利潤企業はまた「資本の組織」であって,製品の製造販売などを行なうとともに,資本(「価値」)を費消(費用),回収(収益),利潤(利益)をあげようとします。
貸借対照表(勘定式の貸借対照表)では,貸方(右側)で「負債」と「資本」を表示します。
「負債」は,借入金や買掛金などであり,ほかから借り入れてきた資本,または借り入れてきたとみられる資本ですから,他人資本といいます。
それにたいして「資本」は,企業の所有者(株主)が出資した資本,または企業が稼ぎ出した資本を自社へ再投入したものですから,自己資本ともいいます。
「負債」と「資本」との合計は,他人資本と自己資本との合計であって,企業が調達(投下)運用している資本の総額,つまり総資本となります。
貸借対照表は借方(左側)で,流動資産と固定資産を表示します。
固定資産は,機械装置などの生産設備などであり,流動資産は,現金預金,売掛金,製品などです。
貸借対照表は,「企業」,「経営」の構造(「体」)と製造販売などという行動と資本の調達などを表示しているといえます。
損益計算書(製造原価明細書を含めて)で表示されるように,製品の製造販売などとともに,製造費(製造費用),販売費(販売費用)などという費用となり,売上高などという収益が発生します。
費用は「価値」の費消,喪失であり,収益は「価値」の回収獲得ですから,費用と収益との差が「価値」の増殖,利潤(利益)になります。
このような意味で,企業は資本(「価値」)の組織であって,費用,収益,利潤(「価値」の増殖)をはかるといえるわけです。
貨幣経済といわれる経済社会では,なによりもまず貨幣(「現金」,この意味での資金)が財でありますから,財務とは「現金」を入金(収入)出金(支出)することといえます。
資本主義といわれる経済社会では,資本(「価値」)も財であり,費用・収益・利潤(利益)をはかることも財務になります。
ひらたい言葉でいうと,元来は,貨幣,現金の収入支出が財務でしたが,今日では,資本,費用・収益・利潤も財務といえます。
歴史的にみてみますと,中世の終わり頃から,広く行なわれていた巡歴商業(各地で開かれた市を巡歴して行なう商品の売買取引)では,仕入れは現金仕入れ,販売は現金販売でした。
宿泊費などももちろん現金払いでした。
現金支払いと現金収入の差が収入超過で,現金増でした。
これが今日でいう利益でした。
ですから,利益は現金増殖で「金もうけ」でした。
今日のような費用(「価値」の費消)・収益(「価値」の回収獲得)・利益(「価値」の増殖)というような考え方はなかったのです。
ところが,とくに産業革命(18世紀の後半頃から,英国で発生,各国に波及した,人の手による製造〈手工業〉から機械による製造〈機械制工業〉への変革)以来,固定資産が急増,製品などの棚卸資産,企業間信用(売掛金と買掛金)の増大などにともなって,「現金」(資金)から資本が分離独立して,費用・収益・利潤が重視され,資金のことは全く忘却されてしまいました。
資金のことが広く問題にされ,損益とともに資金が重視されるようになったのはごく最近のことです。
以上のようにみてきますと,財務諸表という場合の財務とは,資金と資本,「現金」の収入支出と費用・収益・利潤であって,広義の財務です。
最狭義の財務資本の調達と資本の返済が財務といわれています。
資本の返済を含めて,資本の調達を財務ということもあります。
資本の調達返済というよりも,以上のような「企業」,「経営」に,資金ないし資本を投入(持ち込み)し,「企業」,「経営」から,資金ないし資本を投出(持ち出し)して返済すること,「企業」,「経営」に,資金ないし資本を投入(持ち込み)し,「企業」,「経営」から資金ないし資本を投出(持ち出し)することが,財務(最狭義)というべきなのです。
まず他人資本については,借入金の調達と返済,社債の調達と償還は,「企業」,「経営」へ資金ないし資本の持ち込み,持ち出しですから,財務です。
預り金にはいろいろなものがあって,一律にはいえませんが,従業員預り金は,「企業」,「経営」へ資金ないし資本の持ち込みですから,財務になります。
自己資本については,資本金の調達と返済(株式の償還)は,「企業」,「経営」へ資金ないし資本の投入(持ち込み),「企業」,「経営」から資金ないし資本の投出(持ち出し)ですから,財務です。
また利益積立金などは「自己金融」であって,外部からの資金の投人(持ち込み)ではありませんが,企業の利益金をその「企業」,「経営」へ留保,「持ち込むもの」であって,財務といって差し支えないでしょう。
要するに,「企業」,「経営」に,資金ないし資本を調達して持ち込むこと,「企業」,「経営」から資金ないし資本を投出(持ち出し)することが,財務といわれてきたのです。
本書で,財務関係収支の財務とは,この意味の財務です。
企業は,一面では,人(労働力)と設備,材料などの諸物財という生産販売の諸要素の組織であって,財貨を生産販売するものです。
他面では,企業は資本の組織であって,資本を調達して運用するものです。
ですから,要素的には,人事管理,組織管理と設備管理,材料管理など,過程的には,生産管理,販売管理などとともに,資本管理,したがって資本の調達と運用の管理,つまり財務管理が必要です。
このような諸経営管理が必要になります。
経営管理というのは,生産販売などの実行(執行)を管理するということであって,あらかじめ生産販売などの実行の計画をたてること(プラン),生産販売などの実行を指揮すること(ディレクト),および生産販売などの実行の結果(実績)を統制すること(コントロール),つまり計画,指揮,および統制ということです。
計画の設定(プランニング)計画の設定というのは,「なにをなすべきか」,また「いかになすべきか」をあらかじめ決定することです。
計画は,つぎのような手順で設定されます。
目標の設定=まず,なにをなすべきか,どこに重点をおくべきかということ,つまり目標をきめます。
目標には,「社訓」,「社是」などのような基本目標と,目標の総資本利益率,目標の売上高,目標の生産高などのような執行目標とがあります。

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